インタビュー② 牧場がつくる塩。牛もとびつくミネラルたっぷり十勝の恵み

北海道十勝エリアの広尾にあるオーガニック牧場「鈴木牧場」さん。

ここでは牛たちがストレスフリーで過ごせるよう、一年中放牧をし、3年かけてオーガニックの牧草を実現し、牛たちのごはんは牧草だけ(グラスフェッド)というこだわりがあります。

「全ては牛のため」と語るのは鈴木牧場を経営される鈴木敏文さん。

そんな鈴木さんは、十勝の海から汲んだ海水で塩をつくっています。

今回は塩をつくるための海水クミに同行させていただきながら、鈴木さんの塩への思いを伺ってきました。

 


牛のため。牧場が塩をつくったきっかけとは

「家畜伝染病の発生を機に、牛たちの健康を考えて循環型酪農を実践してきました。

酪農って、化学肥料や農薬、穀物資料など輸入で成り立っているんですよね。

外部要因に頼ってばかりだなと思いました」(鈴木さん)

牛たちにもミネラルが必要で、「鉱塩(こうえん)」とよばれる塩の固まりを日常的に舐めています。

鈴木さんはその塩もご自身で作ろうと決められました。

「十勝は自然に恵まれた地域なので、なるべく外部から取り入れたものを使わずに、この地域にあるもので牛を健康に育てたいという思いがありました。

まずは、穀物飼料、ビタミン剤、デントコーン(牛が食べるとうもろこし)などを与えることをやめ、牧草を100%自給して、その牧草を牛が食べ、飲み水は井戸水を利用して与えています。

次に必要なのは塩でした。」(鈴木さん)

 


満月の日に汲むミネラル豊富な海水

「広尾町は漁業の町でもあります」

と牧場から海にむかうトラックの中で語ってくださった鈴木さん。

海水汲みにも同行させていただきました。

到着したのは広尾漁協ウニ種苗センター。

こちらで満月の日の海水を分けていただいているとか。

センターは、湾内ではなく湾外から道南太平洋の海水が汲めるように設置されててい、たくさんのミネラルが混ざり合う海水を汲むことができるそうです。

トラックの荷台に積んだタンクに海水を汲んでいる最中、

「よければ舐めてみますか?」

と言っていただいたので舐めてみました。

「しょっぱくない!」というのが最初の感想でした。

驚くわたしに、「そうでしょう」とにこやかな笑顔を向けてくださる鈴木さん。

「満月の日に採取すると決めているんです。

満月の日は、潮の満ち引きによって海底にたまっているミネラルが混ざり合うと言われているので、そのミネラルをたっぷり含んでいるからこそ、しょっぱいだけではないんですよね」(鈴木さん)

 


こだわりは塩釜から。牛もとびつくミネラルたっぷりの塩

「塩釜も、塩を作る施設まで行き塩釜の寸法を測定させていただいて、持ち帰って自分で作りました」(鈴木さん)

たんたんと語る鈴木さんですが、こだわりとセンスがなければここまで出来ない、とてもすごいことをされています。

2tの海水を汲み、塩ができる量は20kgほどだそうです。

「できあがった塩を牛たちにあげたら飛びつきました。

いつもの塩もおいてあるのに、そっち(いつもの塩)には見向きもしなかったんですよね。

牛たちにも必要なミネラル、美味しさがわかるんだなと思いました」(鈴木さん)

実際に手作り塩に飛びつく牛さんたちをみているからこそ、美味しさが伝わる説得力のあるお言葉です。

土、牧草、水、塩と、牛の体に吸収されるもの全てにこだわりをもち、作ってこられた鈴木さん。

だからこそ、この塩はよりいっそう旨みを感じることができます。

牛さんも食べる塩。

なんだか牧場や牛と一体になった気持ちになれる塩ですね