インタビュー①オーガニック牧場が誕生した日
【きっかけは獣医師の奥様の一言だった】
北海道の広尾町に位置するオーガニック牧場「鈴木牧場」を経営する鈴木敏文さん。
ここでは牛たちが食べる牧草が育つ土作りからこだわり「オーガニック・放牧・グラスフェッド」を実現しています。
約3年もの月日をかけて実現させた牧場や牛への思いについてお伺いしてきました。
「2008年と2010年に家畜伝染病のサルモネラが発生しました。
当時いた牛たちの約半くらいが陽性でした。
何十頭も淘汰しなきゃいけなくなりましたし、牛乳も捨てないといけないという状況で、経営にもすごく大ダメージでした」(鈴木さん)
当時を振り返りながらゆっくりと語り始めてくださった鈴木さん。
経営だけでなく牛たちにも強く感じた思いがありました。
「何よりも罪のない牛たちとお別れしなければいけないことが辛かったです。
牛たちの命を奪ってしまったのは、人の責任だと思いました」(鈴木さん)
牛たちとのお別れに心を痛めた鈴木さん。
どうしたら牛たちの病気を治しながら育てていけるだろうかと考えていたとき、獣医師の奥様から言われた一言があったそうです。
「『牛たちを治療するのではなくて、病気にならないように健康に飼いなさい』とアドバイスをもらいました。
まさにその通りだなと思いました。
そこから人が変わったかのように、牛たちの健康を第一に考えるようになりました」(鈴木さん)
【人と牛と環境のよりよい循環を目指して】
「牧草を食べたら苦かったんですよね。
牛たちはこんな牧草を食べているのかと思って、美味しい牧草を作るためにはまず土作りからだと思いました。
土が健康だと、美味しくて栄養価のある牧草が育ちますよね。
土作りをして、その土で牧草を育てて、その牧草を食べる牛たちが健康に育つことができる。
この僕場で『健康と循環』というのを大切にしています」(鈴木さん)
牛たちが食べる牧草まで食べる鈴木さんには驚きました。
「今は化学肥料やビタミン剤なども一切使わずに育てています。
牛は本来草食動物なので、美味しい牧草を育てて与えるようにしています。
牛は牧草を食べてそれをエネルギーに変えて、牛乳や肉を生産してくれる素晴らしい動物ですよね」(鈴木さん)
インタビューにお答えいただきながら、牛さんたちが不思議そうな顔で鈴木さんに近付き、ちらりと見て通り過ぎていく。
時にはそばで牧草をむしゃむしゃ食べる。
そんなリラックスした風景を見ることができたのも、鈴木さんが牛さんたちへ愛情を注ぎ、牛さんが鈴木さんへ信頼を寄せているからこそだと感じました。
私はまだ少し警戒されていたかな?次はもう少し仲良くなれたら良いなと思いながら・・
次回へ続きます。